淋しいお月様
一緒についてきた、って云っても、しばらくは音信不通だったじゃない――。

静哉に対して、そんな思いを抱いた。

「こいつ、多久美省吾と週刊誌にとられたんだぜ」

開始早々、静哉は何だか得意気に切り出した。

「え、タクミって、ミュージシャンの?」

「そう」

笑みをたたえて、静哉はビールジョッキを傾ける。

自分の彼女が、他の男といるところを撮られたのに、何が嬉しいんだろう。

「すごいな、星羅ちゃん」

静哉のお友だちは、皆、一歩踏み込んで私に顔を向ける。

「タクミとつきあってたの?」

「いや、違います。お友だちです」

「へ~、じゃあ、タクミの連絡先とか知ってるんだ? 呼んだらくるんだ?」

「それは……どうでしょう」

「芸能人と友だちって、凄いな」

「ははは。すごいだろ」

何故か静哉が受け答えた。

とても自慢げだ。
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