淋しいお月様
「ね、呼んでよ、タクミ」

「生で見てみてぇ~」

男性陣がやんややんやとはやし立てる。

「彼……忙しいので」

私はぴしゃりと断った。

「“彼”だって。うわ~。ほんとに友だちなんだな」

「つきあってるんじゃないの?」

「いや、でもタクミって確か女優の立川絵里と噂なかったっけ?」

「タクミは、星羅のことを気に入ってたんじゃないかな」

静哉がそう云いながら、一冊の本をテーブルの上に置いた。

あの、私が載った週刊誌だ。

みんなの手が一斉に伸びる。

は!?

何で静哉が、こんなもの持ち歩いてるの?

「ほんとだ。星羅ちゃんだ」

「すげ~。俺も芸能人と友だちになりて~」

さっきから、話題はセイゴさんのことばかり。

まるで、静哉の自慢話みたいだ。

私は晒し者扱いだった。

まさか、静哉、それが目的で?
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