淋しいお月様
あれ、誰かいる。

私はブランコに影を見つけた。

あれって……もしかして。

私はゆっくりと影に近づいた。

手にはビールの缶を持って、月を見上げながらぼんやりとしている。

「……セイゴさん……」

私は思わず、その影に声をかけていた。

すると彼は、私を見、ぱっと立ち上がった。

「ひとりでそんなことしてて、淋しくない?」

私は苦笑しながら言った。

「……淋しいさ」

セイゴさんも苦笑。

そして、私たちはしばらく見つめあっていた。

深い瞳。私を安心させる目だ。

「どうして、こんなところに?」

口火を切ったのは私の方だった。

「――彼氏がいたって知っても、星羅ちゃんに会いたかったから」

セイゴさんは破顔一笑した。

私もつられて、笑顔になる。

「彼氏なんて、いないわ」

「えっ」
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