淋しいお月様
セイゴさんが、ソフトクリームを私の口許へ持ってくる。

「夢のカップル食い、お先にどうぞ」

「セイゴさんが先でいいよ」

「いいよ、星羅ちゃん、どうぞ」

「じゃあ、いただきます」

私がソフトクリームを齧ろうと顎を下げたのと、セイゴさんがソフトを私が食べやすいように持ち上げたのと、ふたりの動作が重なった。

「あっ」

どちらからともなく、声を出した。

ぺちゃっ。

冷たいソフトが、私の鼻のあたまについてしまった。

「カップル食い、初体験は失敗だね」

そう言ってセイゴさんは指先で鼻のあたまを拭ってくれた。

そしてそのまま、ぺろりと舐めた。

「うん。星羅ちゃんの味がする」

「何よ~、それ。どんな味?」

「すっごく美味しい」

そう言って、ふたり、目を合わせる。

「仲いいね、俺ら」

「仲いいね。あはは」

傍から見たら、いちゃつきカップルだ。

まあ、実際そうなんだけど……。
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