淋しいお月様
「大変そうだね」

「そうだね。曲作りで家に籠もってる時は、ほんと寝食忘れるくらいだから」

「そうなの?」

初めて出会った日から、いつも私の部屋に入り浸り。

ライブなりリハーサルなりでちょこちょこ出て行くことはあっても、基本、私の傍にいてくれた

セイゴさんのスタイルからは想像できない。

「だから、今のうちに星羅ちゃんといっぱい色んなところ行きたいなって思うんだ」

「また、会えなくなるの?」

「ほんの数週間だよ。会いたくなったら、いつでも会いに行くよ」

そう言って、私のあたまをなでるセイゴさん。

きゅん! そんな仕草だけでも、私のハートは跳ね上がってしまう。

そんな私に気づいてか、知らずか、セイゴさんはよっ、と声をかけて立ち上がった。

「観覧車にでも、乗ろうか」

大きく伸びをしながら彼は言う。

細くて長い手足が魅力的。

「うん」

私も後に続いた。
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