淋しいお月様
気がつくと、私は芝生の上だった。

あれ? ベッドじゃない。

「起きた?」

「あ、あれ? 私、寝ちゃってた……?」

セイゴさんの曲に聴き惚れてたはずなのに、いつの間にか安心して眠っちゃったみたいだ。

「あはは。子守唄じゃなかったんだけどな」

「ごめん。心地よくて……。私、どれくらい寝てた?」

「30分くらいだよ」

太陽はまだ高い位置にあった。

「よかった……夕暮れまで眠りこけなくて」

「そうだね。また、風邪ひくよ。星羅ちゃん、弱いんだから」

「ううん。セイゴさんとのせっかくの時間を、無駄にするところだったわ」

「俺としては、星羅ちゃんの寝顔を見られる、ラッキータイムだったけど」

あははは、とふたり、笑い合う。

「じゃあ、そろそろお弁当にしようか」

気がつけば、お腹が空いていた。

「うん」

セイゴさんが、お弁当の包みを開く。
< 277 / 302 >

この作品をシェア

pagetop