淋しいお月様
森林公園デートも終わって、セイゴさんは今日は私の家に泊まらずに帰って行ってしまった。

テーブルの上に、置き手紙があるのに気づいた。

“ご飯は小分けにして、冷凍庫にあります。しばらくのおかずも冷凍庫にあります。
チンして食べてください。豚肉の味噌漬けは冷蔵なので、早めにフライパンで焼いて食べてください“

細いセイゴさんの文字。

ほんと、主夫させちゃってたな。

今度会った時は、今度こそ料理上手になろう。

そう思いながら、私はベッドに横になった。

ああ、セイゴさんのいない部屋って、広く感じる。

部屋が広いのは嬉しいことだけど、淋しい。

次に会えるのはいつなんだろう。

セイゴさんのぬくもりを感じられるのは、いつなんだろう。

私は、ベッドの上のウサギのぬいぐるみを抱きしめた。

遊園地に行った時に、セイゴさんからもらったものだ。

しばらくは、このぬいぐるみがセイゴさん代わりだ。

「今、何してる?」

私はぬいぐるみに向かって話しかけた。

「今、誰といる?」

うさぎは何も応えない。

けれど、そのつぶらな瞳が、私に語りかける。

“こころはいつも、君の傍だよ”

淋しいひとり遊び。
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