淋しいお月様
「そうなんだ。しかし、びっくりするほどの料理下手だね、星羅ちゃん」

「うん……自覚してる」

やっぱり、セイゴさんがいてくれたらな。

……なんて、これじゃあセイゴさんに家事を求めてるじゃないか。

ダメだ。こんなんじゃ。

今朝だって、着ていたパジャマをそのまま床に脱ぎっぱなしにしてきたし。

次にセイゴさんが家に来た時は、また脚の踏み場もない、ゴミ屋敷になってるのが想像できる。

「タクミが家事してくれてたんでしょう」

私の思いを察するかのような、ユアさんの発言。

「う、うん……」

「料理に、掃除に」

「うん……」

「そんなんじゃ、ほんとにタクミに逃げられちゃうよ」

逃げられる……。

私ははっとした。

確かに、こんなだらしないところばっかり見せてて、普通の男のひとなら、幻滅することだろう。

セイゴさんと別れるなんて、そんなことあるのだろうか。

考えられないし、考えたくもない。

だけど、本当に嫌われたりしたら……。

嫌な考えがあたまを巡る。
< 282 / 302 >

この作品をシェア

pagetop