淋しいお月様
ほんと、いつどこで誰が見ているか解ったもんじゃない。

でもよかった。観覧車でのあのキスは、見られていない。

ふたりだけの秘密。

それにしても、結婚まで秒読み間近、か……。

私たち、知り合って間もないんだよ?

まだ話は早いよ。

だけど、時間ってそれほど必要なものかな?

相性が合えば、ずっとずっと仲良しでいられると思う。

私とセイゴさんの相性は? 縁は?

ひとり、悶々としてしまう。

それにしても、週刊誌に載ってるセイゴさん、やっぱり素敵だな。

か細くて、女の子みたいなしなやかな手足。

だけど、私をおぶる背中は意外と大きくて……優しくて。

その雑誌に載ってるセイゴさんの笑顔は煌めいていて……優しくて。

ああ、セイゴさんに会いたい。

唐突に、そんな感情が生まれた。

淋しいよ……いつになったら会えるの?

私は携帯をアニエスベーのバックから取り出した。

プリクラも写メもない。

セイゴさんの顔が見たい。声が聴きたい。

ネットに繋いだら、多久美省吾のサイトで、彼の画像をたくさん見られるんだろうけど、それは
みんなのタクミであって。

私だけのセイゴさんの顔が見たいよ……。
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