淋しいお月様
そんな中、実家の母から電話がきたのだった。

静哉を追って仕事を辞め、半ば家出気味で故郷から離れた私。

ずっと家族とは連絡をとっていなかったのだ。

「……お母さん」

『星羅、元気にしてるの?』

久しぶりに聞く母の声に、涙が出そうになった。

上京したてで、誰も知り合いがいなく、ひとりぼっちだった頃、何度実家にすがりたかった
か……そんな思いを思い出したのだった。

「元気だよ。どうしたの? 急に電話なんかしてきて」

すると、電話の向こうから、ため息が聞こえた。

『結婚の予定もないのに、静哉くんを追っかけて上京して、その後どうしてるかと思って』

「お母さん……」

『ほんとはずっと、心配だったのよ。だけど、こころを鬼にしなきゃと思って、ずっと連絡しないままだったけれど。やっぱり娘のことが心配なのよ』

「ありがとう」

『で、静哉くんとは進展あるの? 結婚の話とか、出てるの?』

「……静哉とは、別れたの」

ふーっ、と長く息を吐く音が聞こえた。

『やっぱりね。あんたなんか生活力もないし、家庭的でもないし、そりゃ、静哉くんも愛想尽かすわね。お母さんの思ったとおりだわ』

「うん……」

母にはお見通しなのだった。

さすが27年間、育ててもらってきただけある。
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