淋しいお月様
『で、どうするの? 帰ってくる? お父さんも、もう星羅のことは許しているのよ。態度に出さないけれど、あのひとも心配してる』

「心配かけてごめんなさい……」

『貯金も底をつくんじゃないの? どうせバイト生活なんでしょ? 東京はお家賃.高いって聞くしね』

「でも、大丈夫。ちゃんと家事もやってるし、仕事も派遣だけど、なんとかやってるよ」

私は明るい声を出した。

実際、今は実家に帰る気など、ないのだ。

両親はもうトシだけれど、お兄ちゃん夫婦と気兼ねの無い二世帯住宅に住んでいる。

何かあっても、お兄ちゃんとお義姉さんが両親の面倒を見てくれる。

『東京にいたい理由でもあるの?』

私は瞬時にセイゴさんの顔を思い浮かべた。

「……好きなひとが……」

『また、あんたは男に振り回されるんだから。将来性のあるひとなの? 結婚の話は出てるの?』

「……結婚なんて、そんな……」

3秒ほど、間があった。
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