淋しいお月様
振り向くと、そこには人がいた。

私に雨が当たらないように、傘をさしてくれていたのだ。

「やっと気がついた?」

細面で、肩も細い、ひょろりとした青年が苦笑して言った。

「あ、あれ……?」

「しばらくトリップしてたね」

私に傘を手向けてくれていたので、そのお兄さんはびしょ濡れだった。

彼が着ていたパーカーも、重く水を吸っている。

「ご、ごめんなさい。いつから……?」

「謝ることないよ」

少しハスキー調な声。

「風邪、ひきますよ」

「君もね」
< 46 / 302 >

この作品をシェア

pagetop