淋しいお月様
私はブランコからさっと立ち、傘の柄をぐい、と押し、そのお兄さんに傘が被るようにした。

「ありがとう。大丈夫です」

「そう」

見ればお兄さんは、コンビニの袋を携えている。

そこのコンビニに買い物に来たついでに、私の姿を見たというところか。

すると彼はまた傘を私の方に半分手向け、

「家まで送るよ」

と笑った。

「大丈夫ですよ。家、すぐそこなんで……くしゅん」

くしゃみがひとつ、出た。

急に寒気がして、身震いをした。

そんな私のジェスチャーに気づいてか、彼はまた言った。

「送るよ」

東京に来てから、都会の人間は冷たい、と思っていたけれど、そうでもないんじゃないか……?

なんてちらっと思ったりした。
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