淋しいお月様
身もこころも弱っていた私は、接客業以外で誰かと話しているのがちょっぴり嬉しかった。

たとえ、このお兄さんがナンパ野郎だったとしても。

だけど、そんなギラギラした感じはしなかった。

単に、私を心配してくれているのが感じ取れた。

「傘もないだろ」

「家にあります」

「そうじゃなくて」

彼はまた苦笑。

眉毛が八の字になる。

そしてお兄さんは私の足許にあった、まだ飲んでいないビール缶と空き缶が入ったコンビニ袋を手に取った。

「行こう。ほんとに風邪ひいちゃうよ」

「……じゃあ、お願いします」

私はまだブランコの下にあったマックの袋を拾い、お兄さんに従うことにした。

「その袋も、持つよ」

「……すみません」
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