淋しいお月様
この人なら、信頼できる――。

私は何故だか、そう確信していた。

小さなビニール傘で、あいあい傘をしながら、私たちは歩き出した。

「……、どうしてすぐに声をかけてくれなかったんです?」

お兄さんは見たところ、私と同じくらいの年代のようだった。

けれど、初対面もいいとこだったから、私は敬語を使った。

「だって、怪しまれるだろ」

「黙って後ろに立っていられるのも、充分怪しいですよ」

「そっか、そうだな、はは」

全身が骨でできているようなひとだった。

腕も脚も、傘を持つ手首も細い。

背は私と並んでひょろりと高い。

静哉と比べてみても、あいつより高いみたいだから、175cmはあると見た。
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