淋しいお月様
『その調子じゃ、外出もできないだろ。俺が携帯と財布、取りに行くから。あのアパートの、何号室?』

家に来る――。

こんな散らかり放題の家になんて、入れられないよ。

「じゃ、アパートの前で待ってます」

『ダメダメ。余計に風邪がこじれちゃうだろ』

「んー。……ごほごほっ」

『ほら~。今から行くよ。何号室?』

「……201号室」

『おっけ。10分で行く』

「じゅ、10分って……」

がしゃっ。

そこで電話は切れた。
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