淋しいお月様
会社に欠勤の連絡を入れると、まもなくして家のチャイムが鳴った。

はいはい、名無しのお兄さんですね。

私はまた重い体をベッドから持ち上げ、玄関へと向かった。

鍵を開ける。っと、ゆうべ、鍵をかけるの忘れたみたいだ。

こういうところまで、私はズボラなんだな、と思ってしまう。

「はい――」

ドアを半分開けて、お兄さんの姿を確認する。

「やあ、……ってか、顔赤っ」

「赤いですか?」

「熱、あんじゃない?」

「測ってないです」

「声もひどい」

「頭痛もします」

「風邪のオンパレードだな」

そう言って彼はまた昨日のように眉を八の字にして、苦笑する。
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