淋しいお月様
ごほごほごほっ。私は激しく咳こんだ。

「大丈夫? ちゃんと食べてる? 薬は?」

私は首を横に振る。

「あれ、その服、昨日のままじゃん。そのまま寝たの?」

私は咳こみ、口に手を当てたまま頷いた。

「大丈夫です。……じゃあ」

私はそのままドアを閉めようとした。

「あ、携帯、携帯」

「あ、そっか」

彼が訪問してきた理由を、忘れていた。

「……今、持ってきます」

そう言って、踵を返した瞬間だった。

ふらっ……と私は脱力して倒れそうになってしまった。

「ちょっ……大丈夫?」

幸い、お兄さんがその細い腕で支えてくれた。
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