淋しいお月様
セイゴさんは家に着くと、私をまたおんぶしてくれようとした。

「階段もキツイだろ。どうぞ」

私に背中を差し出してくれる。

細くて狭い背中。

だけど何故か、頼もしく思えた。

「何から何まで……すみません」

「いいよ、いいよ」

2階の私の家のドアに辿りつくと、そのまま私を負ぶったまま、

「鍵、貸して」

と言った。

私は鞄から鍵を出し、セイゴさんに手渡す。

私を背中に置いたまま、器用にドアの鍵を開けた。

「あ、ここまででいいです」

「ベッドまで送るよ」

「あ、でも散らかってて……」

「いいよ、いいよ」

彼の優しさに、私は甘えることにした。

散らかってても、いいか。

今はとにかく、一刻も早くベッドに横たわりたい。

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