淋しいお月様
「うわっ。ひでぇな」

私を背負ったまま、1Kの部屋に入るなりセイゴさんは声をあげた。

「……すみません」

部屋の散らかりように、セイゴさんは驚いたらしい。

私は思わず謝っていた。

「ベッドの上だけは、散らかってないな」

やれやれ、と言った口調で彼は言う。

私をベッドにそっと下ろし、新聞や雑誌やコンビニの袋で脚の踏み場もない部屋を見回して、セイゴさんはあたまを掻く。

「ありがとうございます。もう、大丈夫ですから……」

「うん。眠ってな」

「はい……」

私は外出した疲れもあって、そのまますぐにうとうととし始めた。

ふわっと毛布がかけられる感触で、そのまま眠りに落ちた。

心地よい眠りだった。

夢は見なかった。
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