淋しいお月様
「ん~、まだ微熱あるな」

セイゴさんの手は、骨でごつごつしてて、冷たかった。

「シチュー作ったんだ。食べよ」

「セイゴさん、帰らなかったの?」

「病人をほっとけないよ。ちょっと買い物に出かけてきたけど」

私はセイゴさんをまじまじと見つめた。

優しいひと、なんだな。

お人よし、なんだな。

こんなひとが彼氏だったら、どんなに幸せか。

きっと、静哉みたいにずっと音信不通で、放置プレイみたいなことはしないだろう。

「なに、見つめて。目、潤んでるよ」

また眉を八の字にして、困ったように笑う。

「目が潤んでるのは、熱のせいと、寝起きのせいですっ」

私は誤解がないようにそう云った。

ちょっと大きな声を出しただけで、眩暈がした。

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