淋しいお月様
ふらっ、と倒れそうになる私を、間一髪でまた彼は支えてくれた。

「っと、ほら。病人」

そう言いながら、私の肩に手をかけ、リビングへと誘ってくれた。

私をベッドの上に座らせると、パチン、と部屋の電気をつけた。

「あれ……」

部屋の中が、綺麗になっていた。

新聞と雑誌はきちんと整頓され、部屋の隅に置かれていた。

コンビニの袋もないし、お酒の空き缶もない。

テーブルの上は、ぴかぴかと光っている。

「君が寝てる間に、整理しておいたよ」

「何から何まで、ほんとすみません……」

フローリングが露わになっている。

久々に床を見た気がした。

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