淋しいお月様
彼はそう言い、綺麗に整頓された(セイゴさんが片付けてくれた)水切り籠からお皿を取り出すと、作ったものを載せた。

豚キムチだ。おいしそうだ。

「これから仕事なのに、お酒飲んでいいんですか」

「いいの。ほろ酔いくらいがハクがつく」

「でも」

「いいの。自由業だから。それより、星羅ちゃんの方こそ病み上がりでお酒なんて大丈夫?」

「大丈夫」

私が頷くと、セイゴさんはまた顔だけこちらへ遣して、にこっと笑った。

「治ったんだね。よかった」

そして彼はコンロにかけられたままのお鍋に手をかけた。

「それは何?」

「枝豆と豆腐の生姜煮」

「おいしそう」

「部屋で待ってて」

「はい」

私は彼の言葉に促されるまま、キッチンから部屋に続くドアをくぐった。
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