淋しいお月様
――って、あれ。

何、私、普通に会話しちゃってるんだろう。

昨日今日出会った、見知らぬひとなのに。

風邪の看病までしてもらって、部屋の片付けまでしてもらって、挙句の果てには料理までしてもらって。

東京は怖いところだと思ってたけれど、昼間のユアさんの言葉を思い出す。

”東京のひとだって、人間は人間だよ~”

いやそれはまあそうなんだろうけど。

まるで私、セイゴさんと昔から同棲してる間柄みたいじゃないか。

今のところ、怪しそうなひとじゃないし。

職業が不明なのは、ちょっと気にかかるけれど、何となくセイゴさんなら身を預けられる。

お金騙し取られたとしても、もともと手持ちのお金は少ないし。

身体奪われたとしても……それは困るか。

私には、静哉という彼氏がいるんだから。

音信不通の彼氏だけれども。
< 85 / 302 >

この作品をシェア

pagetop