淋しいお月様
「おまたせ。あれ、何ぼーっとしてるの?」

「いや。お世話になってます」

「何、改まって。あはは」

今朝出した客用布団が見当たらなかった。

きっと、セイゴさんが押入れにしまってくれたのだろう。

几帳面なひとだ。きっと、A型だな。

「はい、どーぞ」

セイゴさんが、テーブルの上に料理を置いてくれる。

「はい、どーぞ」

私も彼の口調を真似て、買ってきたビールを手渡す。

「さんきゅ。じゃあ、食べようか」

「はい。いただきます」

ふたり揃って、ビールのプルタブを開けた。

缶を合わせて、乾杯する。

豚キムチに箸をつけた。

おいしい。

「手料理って、嬉しいです」

「あの散らかりようじゃ、料理もしてないだろうなって思ってた」

困ったように笑うのは彼の癖だ。

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