淋しいお月様
「ありがとうございます」

「あはは――っと、俺、もうそろそろ行かないと」

そう言って、ビールをぐいーっと飲み干すセイゴさん。

「そうなの。淋しいな……」

私の言葉に、彼はまた困り笑いでじっと私を見つめた。

「また来るよ」

「またって、いつ? 明日? 明後日?」

「10時間後」

そう言って彼は立ち上がると、私のあたまをぽんぽん、と叩いた。

「風邪ぶりかえすなよ」

「はい」

「……敬語は、いらないから」

「はい……、あ、う、うん……」

「腹出して寝るなよ」

そう最後に言い残し、彼は部屋を出て行った。

取り残されて、ひとりになったけれど、あたたかい料理と、あたたかい会話で、私のこころは十分満たされていた。
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