淋しいお月様
ふあああ、こんなにあるんだ、料理本って……。

私は本屋の一角で、ひるんでしまっていた。

セイゴさんがいなくなってから、ちゃんと家で料理をしようと意気込んで書店に来たものの、その料理本の数の凄さに圧倒されていた。

”毎日の献立””時短、うま安料理””30分で2品””家計簿やりくり”……んん~。

私はどれを選んだらいいものか、立ち尽くしていた。

一冊に50品あるとして、ここに並べてあるだけのレシピを全部作ったら、一体どれくらいの料理ができあがるんだろう。

とりあえず私は、平台に積まれている”はじめてのメニュー”というピンク色の表紙の本を手に取った。

肉じゃが、ハンバーグ、ロールキャベツ……確かに、はじめて作る料理ばかりだ。

私はその一冊を手に取り、レジへと向かった。

セイゴさんが帰ってくる間、料理の腕を磨いて驚かせてやれ。

そんな魂胆だった。

自炊すれば、家計にも負担がかからないと、ユアさんにも言われたことだ。

今までの自分とはサヨナラだ。
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