お姉ちゃんの憂鬱
「お家に帰るまでが修学旅行だぞー」
という、なんともありきたりなセリフを吐いた胡散臭メガネに、一同「はーい」と返事をして修学旅行一団は解散となった。
3泊4日の旅から無事帰還したわけであるが、あたしの隣には、いまだ眠そうなまどか。
まだ意識が覚醒していないのか、さっきから首が座っていない。
「ほら、まどか、起きないと帰れないぞ。早く帰っておうちで寝なさい」
「んー、眠くて帰れない。かーちゃん助けて」
「いやだから起きろって。助けてじゃなくて」
いまだふらふらしているまどかを支えつつも周りに目を向けると、みんな各々迎えの人に大きい荷物を預けたり、ガラガラキャリーバックを引っ張りながら帰っていく。
そしてその中にミカン頭を見つけてしまった。
向こうは向こうでこちらをずっとガン見していたようで、すぐに視線を合わせて駆け寄ってくる。
完全に耳と尻尾がみえた。
あれは犬だ。
「かなちゃん!おかえりなさい!」
そのまま抱き付いてこられては困ると思い、ふらふらしているまどかを盾にすると、うまい具合に止まってくれた誠にホッと息を吐く。
「うぅ、かなちゃんひどい…再会のハグなのに…」
まどかを前にどうしたらいいのかわからないのか、あわあわウルウルしている。
「ただいま、誠。いい子にしてた?」