お姉ちゃんの憂鬱
「かーちゃん、あたしも行く」
ドアを抜けて、一気に遠くなったプリキュアがもう一度大きくなったと思ったら、まどかがあとから出てきた。
その手にはグラス。
「すっげーな、直江。あんな声あたし出ないんだけど」
「直くんはもう自由にさせとくのが一番面白いよ」
こちらの予想の斜め上を行く直くんは、見ていてとても面白い。
「昨日さ、お迎えじゃなかったみたいだけど、大丈夫だった?電車で寝たりとかしなかった?」
「あー危なかった。ギリで起きれた」
「ということは、寝ちゃったんだね」
「まぁ、起きれたから良しでしょ?直江、何のむってー?」
「オレンジだってさ」
昨日の帰り、夏休み中ということもあって保護者がお迎えに来ている人がほとんどだった。
うちはなぜか誠が来たけど。
どうせ迎えに来るなら母、まさえに車をだしてもらいたかった。
言うと誠が拗ねるから言ってないけど。
ちなみに帰ったら遥香が待ち構えていて飛びつかれた。
どうやら部活に行っている間に誠に置いて行かれたらしい。
まさえはリビングでクーラーに当たって涼んでいたから、どうせ暑い中出たくないとかそんな理由だったんだろう。
「今日ペットは一緒じゃねーの?」
「あー、部活の顧問に呼び出し食らったって言ってた。あいつすっごい馬鹿だから、期末の結果の話だと思う」
「今更期末の話?」
「担任が顧問にぽろっとこぼしたらしくてね。ずっと隠してたみたいよ」
「かーちゃん勉強見てやればいいのに」
「あたしだってそんな頭いいわけじゃないんだから、自分のことで精いっぱいよ」