お姉ちゃんの憂鬱

「はー、歌ったなぁ」


「そりゃこんだけいれば満足でしょうよ」



結局カラオケ店から出てきたのは入店してから5時間後のことだった。



「なにを言っているんですか。5時間なんて一人の時間に換算したらたった1時間ですよ」



なぜカラオケに対してそこまでストイックになれるんだ直くん。



「また来ればいいじゃん。あたしもうお腹空いたし」


「オレもー。どっか入るか」



時間は午後7時。

ちょうどみんなのお腹も空腹を訴えてくる時間帯だ。




「あーごめん。あたし飯はパスで」


「まどか?帰っちゃうの?」


「あーえーっと、保護者がね、ちょっとばっかしうるさいので、今日は大人しく帰るよ」


「そうなんですか。厳しいご家庭なんですね。では、ご飯にはまた別の機会に行きましょう」


「そうだねー。夏休みだし、課題のついでにでもご飯行こうよ。5人集まれば誰かしらできる人いるでしょ!」



さぁちゃんの提案にみんなが頷く。



この5人、みんなそこまで馬鹿じゃないが、突出して頭がいい人もいない。


あえて挙げるならばメグだろうか。

意外と真面目なメグは授業をサボることもなければ課題もちゃんとやってきていると、つるみ始めてから知った。



ギラギラしているのは見た目と態度だけだったということだ。


根本のポテンシャルが違うのか、メグは一度理解すればある程度のことはすんなり頭に入ってしまうと自分で言っていた。


ただ、理解するまでに時間がかかるとも言っていたから、やる気が途中で切れてしまったものに関してはてんでダメなのだ。




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