お姉ちゃんの憂鬱

遥香に渡された電話の相手はまどかだった。


忘れ物をしたと言うから探してみたら、テーブルの下に転がっているキーホルダー付の家の鍵が確かに見えた。



「あったよ。今どこにいる?あたし持っていこうか?」



電話の向こうにそう問いかけると、取りに戻るから待っていてとのことだった。

どうやら電車に乗る前に気が付いたらしい。


まどかの家はあたしの家の最寄駅から2駅先にあるため、電車に乗ってしまったらアウトだ。



しばらく待っていると、ピンポーンとありきたりなチャイムの音が鳴り響き、玄関を開ければそこには相変わらずきれいな顔をしたまどかが立っていた。



「これでしょ?」


「そうそう、これがないとお家に入れないからね」



見つけた鍵を差し出せば、だるそうにそれを受け取るまどか。

なんか少し…元気ない?


さっきみんなと一緒に出ていったときと比べて、どことなく纏う空気が沈んでいる気がする。




「うわーなんかすっごいいい匂いするな。今日の夜飯は肉じゃがだな?」


「あらあら、まどかちゃん嬉しいこと言ってくれるじゃないの」


「うわぁ、お母さん急に出てこないでよ」




リビングから顔を出したまさえがいきなり声をかけるからびっくりしてしまったじゃないか。


「折角だからご飯食べていく?」


「え、いいんですか?!い、やでも急に人増えても迷惑だろうし…」


「あ、お家のご飯があるかな?」


「や、それは全く問題ないんですけど…」


「なら食べていきなよ。昨日一緒に食べれなかったしね」




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