お姉ちゃんの憂鬱
渋る二人を追い出したあと、部屋には静寂が訪れた。
「いいな、こういう賑やかなの。うちは静かで居づらいんだ」
「まどかは賑やかなの好きだもんね」
「まぁ、ただうるさいだけなのは嫌いだけどね。好きな人たちと賑やかにできるってのは好きだ。楽しい」
「だからいつもまどかは帰り際にテンション落ちるのか。やっと謎が解けたよ」
今日だけじゃない。
修学旅行から帰ってきた日も、初めてみんなで遊びに行った日も、普段の学校も。
帰り際にふと寂しそうな顔を見せる理由はそれだったのか。
「かーちゃんはやっぱよく見てんなー!脱帽ですよあたしは。姉ちゃんの鏡だな!」
「なに言ってんのさ。別にそんなよく見てたとかじゃなくて、ただ気になっただけだよ」
「それをよく見てるって言うの。そうか、見てわかるくらいにションボリしてたかあたしは」
「…みんなが気付いてるかはわかんないけど、あたしにはそう見えたって話よ」
「うん、でもまぁ、実際ションボリしてたからな。かーちゃん正解」
そう言って笑うまどかは、いつも帰り際に見せる笑顔を見せた。
そう、この顔だ。
寂しそうに、まるで何か大切なモノを諦めたかのような、寂しそうで泣き出しそうなこの顔が、いつも引っかかっていたんだ。