お姉ちゃんの憂鬱
「あら帰ってきたのー?今日はまさえちゃん家でご飯食べてくると思ったのに。…ってカナちゃんいらっしゃい」
玄関が開いた音で誠が帰ってきたのが分かったのか、しゃべりながら台所から顔を出したのは誠のママさんである聖子さんだ。
持ち歌はもちろん聖子ちゃんの赤いスイートピーである。
「聖子さん、お邪魔します。今日こっちでご飯食べていってもいい?」
「どーぞどーぞ。でもできるまでもう少しかかるから待っててね」
「うん。誠の部屋にいるから」
「…誠、どうしたの?なんか嬉しそうにニヤニヤしちゃって。あ、もしかしてカナちゃんとイチャイチャするつもり?!そういうのはお母さんたちがいない時にしなさいよ!声とか聞きたくないからね!」
「はぁ、大きな声でなに言ってんのさ聖子さん。妄想もほどほどにしないと怒りますよ?」
「え、だってあんたたち付き合うことになったって聞いたからてっきりそうなのかと…違うの?」
「違いますから」
「あらそう。でも、カナちゃんが嫁に来てくれるならあたしも安心だわー。やっぱり誠を手懐けるのはカナちゃんって決まってんのよね」
「おかん、変なにおいしてるけど大丈夫?」
やっと口を開いたかと思えば、聖子さんを台所に戻すための言葉で、それを聞いた聖子さんも聖子さんで「あらどうしましょう」なんて言いながら台所へ引っ込んでいく。
そして、あたしは誠に引っ張られて誠の部屋へと連れていかれた。