お姉ちゃんの憂鬱
学校では自分の座席、弁当を食べるのはまどかの席の左隣、家のリビングではソファーの右端、車に乗る時は運転席の後部座席、自分の部屋では座椅子、あたしの中にはいつもの場所というものがどこにでもある。
そしてここ、誠の部屋でのあたしのいつものは、ベッドにもたれるように青いクッションの上に座る。
部屋に入って、いつもの青いクッションを目指すも誠に握られっぱなしだった腕がそれを許してはくれない。
そのままベッドの上に座らされてしまった。
そして後ろから巻き付いてくる長い腕。
うなじに触る髪の感触。
「で、急にだんまりになった誠くんは一体全体どうしちゃったのかな?」
あたしの体の前でクロスされている誠の手を掴むと、うなじに頭をすり寄せる動きが一瞬止まった。
「ちゃんと話してくれないとわかんないんだけど?何のためにお口がついてると思ってんの」
「かなちゃんにちゅーするため」
「はい不正解。あたしは帰宅します」
「うそうそうそ!いや嘘じゃないけど、かなちゃんが嫌なら我慢できます!帰っちゃヤダ」
立ち上がろうと足に力を込めても、誠の腕がそれを阻止する。
この図体ばっかりでかい子どもはいつまでたっても子どものままだ。