お姉ちゃんの憂鬱

「なんであんた今日はそんなにベッタリなわけ?まぁいつもベッタリなことに変わりはないけど、いつも以上にひどいぞ」



巻き付く腕を撫でながら、できるだけ優しい声で話しかけてやる。

あたしも大概この大きな子どもには甘くなってしまう。




「最近かなちゃんが全然俺のことを構ってくれないから拗ねたんです」


…どうせそんなことだろうと思ったよ。

だが言わせてもらうが、あたしは他の誰より、誠を隣に置いていると思う。


確かに最近は以前から比べるとその時間は短くなったが、それでも一番はやっぱり誠なんだ。




「お前は全然わかってないよなー」


あたしがどんなに誠のことが好きなのかも、どんなに誠の隣に居たいと思っているかも。



「なにが?かなちゃんだってわかってないよ!俺はこんなにもかなちゃんと一緒に居たいって思ってるのに!いっつも後回し!」


こいつは子どもだ。

与えられるのをひたすらに待ち、与えられないと駄々をこねる子どもだ。




「後回しでもちゃんと構ってやってるでしょ?今だってそう」



本来ならばまさえのおいしいご飯を、遥香と一緒に食べているはず。

でも実際はここに、誠の隣にいる。



「あんたが駄々こねるのは最早いつものことだと思って諦めてるけど、あたしがあんたのことどうでもいいと思ってるとか思ってんならそれは間違いだから。あたしは誠のことが好きだよ?誰よりも、何よりも。それじゃ満足できないのかい?」



「…今のもう一回言って」



「…好きだよ、だからもう少し大人しく…」


「かなちゃん、俺も大好きだからね!かなちゃんが一番!」


「…はいはい」



もう少し大人しくしてという注文は聞き入れてもらえなさそうだ。



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