お姉ちゃんの憂鬱

「遥香も誠も疲れてない?大丈夫?」


遥香は人ごみがあんまり得意じゃないし、誠は乗り物に弱い。

そんなに長い時間揺られていたわけではないが、姉心に一応心配なんだよ。



「ううん、平気だよ。姉ちゃんの方こそ、疲れてない?」


「あたしは大丈夫よん。折角みんなで来たのに一人だけダウンとかカッコ悪いからね」


「…無理はしちゃダメだからね」


「わかってるって。遥香は優しいなあ」



こんなできた弟をもってお姉ちゃんは幸せだよ。



「かなちゃん、具合悪くなっちゃったらすぐ俺に言ってね?俺にだからね?遥香じゃなくて、先輩たちじゃなくて、俺ね?」


遥香と話して癒されていると、わざわざ間に割りこんできてそんなことを言った誠。

さらりと手を繋がれたがそんなにびったり横につく必要はないんじゃないだろうか。



「はいはいわかったから離れような?暑いのになんでそんなぴったりくっつくのお前?アホなの?あ、ごめん聞くまでもなくアホか。」


握られた手を振りほどき、デコピンをくれてやる。


「かなちゃんの愛のムチが心に刺さるよ。ぐっさぐさだよ!」



なにが愛のムチだ。
ムチは刺さんねぇだろアホ。





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