お姉ちゃんの憂鬱
「ほら、さぁちゃんと直くんが早く来いよとろいなあって顔でこっち見てるよ?早く行ってあげよう?」
少し先を歩く2人を見ると、うずうずした顔で手招きしていた。
あの二人が一番今日の海を楽しみにしてたからな。
早く入りたくて仕方ないんだろう。
「誠、ラブラブするんでしょ?早くおいで?」
「か、かなちゃん?!」
無言でメグとのにらみ合いを繰り広げるミカン頭の腕をつかみ引っ張ってやると、途端に顔を緩ませて後ろをついてくる。
完全に今尻尾振ってるよこのワンコは。
「遅いですよお姉ちゃん」
「かな、何のんびり話してたの?」
「メグのイケメン発言が飛び出したから盛り上がってたの」
「イケメン発言て?」
「香奈子のことペットから横取りしてやろうかって言ってたんだよ」
また誠の反対隣りににゅっと現れたメグがさぁちゃんの質問に答える。
メグは気配もなくにゅっと現れるからびっくりするなあもう。
「あらら、ペットくんピンチ到来だね」
「じゃあ僕はメグ君からお姉ちゃんを横取りしましょう」
「やめとけ直江。返り討ちにするぞ。ぼこぼこだぞ。」
「…ごめんなさいお姉ちゃん。ぼこぼこは嫌なので横取りは諦めます。やっぱり人間、なんやかんや言っても自分の身がかわいいですからね。」
…直くんはいつだって揺るぎなく直くんだなぁ。
「というか、オレの姉ちゃんは誰がなんと言おうとオレの姉ちゃんですからね。そこのところは忘れないでくださいよ?」
今まで沈黙を貫いてきた遥香がようやく口を開いたと思ったらそんなことを言いだした。
「…お前、愛されてんのな」
「…メグ、このくだりさっきもやった」