お姉ちゃんの憂鬱
「はい、完了」
「あざまーす。さぁちゃん、化粧そのままで海入って大丈夫なの?」
「顔つける気なんてサラサラないからね。でも水に強いやつだから、多少水ついても大丈夫」
「なるほど、抜かりないですね」
「もちろんですよ」
そんなやり取りをのんびりしていたら、ドタバタと足音が近づいてきて、ノックもなしにバターンとドアが開かれた。
ドアの向こうには水着姿ででっかい浮き輪を脇に抱えたミカン頭。
「かなちゃん遅い!」
「ノックもなしに女子部屋に突入とは度胸があるな馬鹿犬。着替え中だったらどーすんだ馬鹿。この馬鹿」
「この短い中で三回も馬鹿って言った!まどか先輩がもう着替えは終ってたって言ってたから大丈夫だってわかってたもん」
「だとしてもノックくらいしなさい。一般常識」
「まぁまぁ、あたしたちがのんびりしてたのも悪いんだし、そのくらいにしてあげなよ?ペットくんだって、悪気があってやったんじゃないんだし」
「さぁちゃん先輩!そうなんですよ!俺は早くかなちゃんとラブラブしたくてこんな失礼な真似をしてしまったのです!さぁ早く行きましょう!」
「…さぁちゃん、こいつは甘やかすとすぐダメになるから甘やかさないでくださいな」
「…そのようですね」
二人でため息。
だってこの馬鹿犬、本当に馬鹿みたいに笑うんだもん。