お姉ちゃんの憂鬱
「あたしだって簡単に手放されるつもり、ないよ。」
ちいさくちいさく呟いたあたしの本心は、波の音と一緒に誠に届くことなく流れていった。
あたしだって不安がないかと問われれば、ないとは言い切れないのが現状だ。
だって、誠は今まで散々遊んでいたし、その中でいろいろ経験しているのは事実。
いくらその付き合いがあたしの気を引くためとかそんなんだったとしても、その経験の差は埋められない。
それに、誠は自分のことを弟みたいに見ているだろうと言っていたが、それはあたしだって言えること。
なんだかんだいって、誠にとってのあたしは姉のような存在で、家族も同然なんだ。
今まで誠が構ってきた女の子たちはあたしとは真逆の、かわいいふわふわした子たちだったし、見ていた限り誠がリードしていたと思う。
あたしたちの関係で誠がリードしてくれたことなんかあっただろうか?
いつだってかなちゃんかなちゃんとあたしに引っ付き、何をするにもあたしを優先するばかりで、前に立つのはあたし。
その関係を甘んじて受け入れていたのは他でもないあたしなんだけれども。