お姉ちゃんの憂鬱
折角積み上げた砂の山を少しずつ崩す。
さらさらと感触のいい砂は、あっという間に堀の中に吸い込まれていった。
誠とあたしの間に溝はない。
なんの障害物もないし、互いの感情はちゃんと互いに向いている。
なのに誠は何が不満なんだろうか。
あたしの態度が悪いのか、誠の気持にちゃんと向き合えていないのか。
ずっと誠に向いていた気持ちは確かに恋だったし、その気持ちは今も変わっていないのに、なにがいけないんだろうか。
「……そんな不安がらないでさ、あんたはいつもみたいに堂々としてたらいいんじゃないの?」
今まで通りじゃダメなんだろうか?
「……っ!…いや、うん。そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺さ、ここでいつも通り頷いたら、もうずっとこのまま変わらないと思うんだよね」
あたしの言葉に一瞬明るい顔をするも、また神妙な顔つきになってしまった誠がそんなことを言った。
「もちろん堂々とするよ?かなちゃんのことを吉岡先輩にとられるつもりもない。けど、今までと同じじゃもう嫌なんだ」
山を崩すあたしの腕をつかんだ誠の手は想像以上に熱を持っていて、あたしを見る目はなんの迷いもなく真っ直ぐで、言葉の真剣さと相まってあたしの顔まで熱を持つ。
なんだか、誠に好きだと伝えられた時のような距離感と温度に、どんどん鼓動が早まるのがわかる。
ダメだ、ドキドキが止まらないよ。