お姉ちゃんの憂鬱
その日の夜。
海の家についている小さなお風呂に順番に入り、夜ご飯は豪華にバーベキューだった。
そしてご飯の後はすっかり暗くなった砂浜で花火で遊び、夏にやりたいことをギュッと詰め込んだような一日となった。
みんなで楽しく遊ぶ中、あたしの隣には常に誠が陣取っていて、時折甘ったるい顔でじっと見つめられるものだから心臓に悪い。
「ペットとなんかあったの?」
花火の片づけをしていると、まどかにそんなことを聞かれた。
誠は今バケツに溜まった使用済み花火を片付けにいっている。
「あー、…なんで?」
「なんか、いつもの空気と違うからさ?いつもよりベッタリな感じ」
「…うーん、まぁ、なんかあったと言えばあった」
「なんだそれ?」
「ううー、うん、昼間みんなが遊んでる時にちょっとね」
「そっか。まぁ、あんたたち付き合ってるっていう割に全然前と雰囲気変わんないから、進展があったんならよかったんじゃん?」
「そ、うなのかな…?」
あたしとしては、誠の言動にドキドキさせられるからちょっと、いや、かなり恥ずかしい。
それに、そんな誠をちょっとかっこいいとか思ってしまっている自分の思考にもまた、羞恥をおぼえる。
真剣に見つめないでほしいし、優しく触らないでほしい。
恥ずかしさで誠の顔を見られなくなってしまうから。