お姉ちゃんの憂鬱
一言で言おう。
「汚い」
「…う、だから、言ったのに」
玄関は普通だった。
まぁ、他の家族もいるんだし当然か。
でも、その計算で行くと家族の共有スペースであるリビングがここまで汚いというのはどういうことだろう。
少し大きめの薄っぺらいテレビに、2人掛けのソファが二つ。
ソファの前にはセンスの良いローテーブル。
かわいいクッションがたくさんあるのは誰かの趣味だろうか。
テレビの横にはカラーボックスがあり、種類の豊富なDVDが見える。
ダイニングテーブルの上には今日使う予定なのか、皿やコップが置いてあり、その横にはペットボトルのジュース。
お茶、スポーツドリンク、炭酸とみんなの嗜好に合わせたチョイスだ。
ここだけ見ればいたって普通な一般家庭のリビングダイニング。
しかし問題はこの先。リビングの床、ソファの上、ダイニングテーブルの椅子の背、テレビの横のカラーボックスの周り。
そこかしこに散らばる洋服、鞄、本、雑誌にDVD、そして極めつけは、なぜここに転がっているのか、サンダルが落ちていた。
雑然としているとは、このことか。
「どうしてこうなったのか、経緯から聞きたいな」
サンダルを拾い上げながらさぁちゃんを見ると、全力で目をそらされた。