お姉ちゃんの憂鬱

片づけが始まると、さっきの発狂が嘘のように黙々と作業するさぁちゃん。


どうやらしゃべれないくらい落ち込んでいるらしい。




「片付けの基本は、使ったものをもとあった場所に戻すってことだよ」


「はい」


「どこに何が入っているのかを、視覚的にわかるようにしておけば、余計なところを開ける必要がなくなるよ」


「はい」


「すこしでも余計なものが増えたと感じたら、潔く捨てることも大切だよ」


「はい」


「形に合わせて並べるだけでも少しはスッキリして見えるよ」


「はい」


「…杯(さかずき)って音読みでなんて読むっけ?」


「はい」


「人間はどこで酸素を取り込むっけ?」


「はい」



もうさっきからこんな感じだ。

何を言っても「はい」しか言わない。



ちょっとおもしろくて最後のほう遊んでしまったが、そこまで落ち込むことだろうか。


部屋が汚い、片付けられないなんて、結構周りにそう言う人がいると思うんだけど。




「…さぁちゃん、そんなに落ち込まないでよ。あたしがいじめているみたいじゃないの」


「…だって。かな絶対あたしのことだらしない子って思ったでしょ。こんなの片付けるの面倒臭いと思ったでしょ」


「思ってないよ。すげーなとは思ったけど、面倒なんて思ってない。てかそんなこと気にしてたの?」


「だって、だって…」


「そんなん気にしないの。あたしが片付け手伝うよって言って自分から来てるんだし、手伝ったらおいしいご飯食べさせてくれるんでしょ?等価交換だよ」




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