お姉ちゃんの憂鬱
「誠、頭出して」
「あたま?」
不思議がりながらもちゃんと頭を近づけてくれる誠。
横になったままのあたしは、そのまま誠の頭を抱き込んで染め直した黒髪に顔をうずめる。
「え?!かなちゃん?!まだ寝ぼけてんの?!」
途端にわたわた慌てだす誠に笑いがこみ上げる。
そうだよ。まだ寝ぼけてるってことにしておいて。
「大人しくして」
「…はい」
あたしの一言にすべて従ってしまう誠は、確かにまどかの言う通り、飼い主の言うことが絶対のペットみたい。
…たまに噛みつかれるけど。
「…あの、かなちゃん?この体勢は大変うれしいんですが、どうしたんですかね?」
「どうもしないよ?あんたはいつも好き勝手くっつくのに、あたしがくっつくのはダメなの?」
「いやいや滅相もない!どんとこいばっちこい!こんな嬉しいことならいつだってウェルカムだよ!」
「うるさい。」
「ごめんなさい」
大きく息を吸い込んだ。
これはあたしが安心するにおいだ。
「あたしは思っている以上にあんたのことが好きみたい」
だって今、ものすごく心が落ち着いている。
それに、もっとこの存在とくっついていたいとも思う。
これは紛れもなく『愛おしい』という感情。
「好きだよ。誠」
たぶんもう離れられないと思うくらいには好きだよ。
「おれも、好き」