お姉ちゃんの憂鬱
二学期も後半に入り、日に日に秋から冬へと季節が移ろいゆくそんな今日。
朝登校すると、直くんの教科書が全て辞書にすり替えられていた。
直くんに呼ばれて廊下の備付ロッカーをのぞきに行くと、見事に中身が全て辞書になっていた。
「なぜに辞書…?」
「もっと言葉の勉強をしろという誰かからのメッセージでしょうか?」
辞書の種類は国語、漢字、古典、漢和、英和。そしてなぜかイタリア、フランス、ドイツ、中国語辞典まで揃い踏みだ。
「…なんの前触れなんだこれは。いたずら?」
「さあどうなんですかね。とりあえず教科書がないと困ります」
「それもそうだね。今日はとりあえず隣の人に見せてくれるように頼みなよ」
いたずらにしても変に手の込んだいたずらだな。
誰がこんなくだらないことをするんだ。
その後、登校してきたいつものメンバーにそのことを説明すると、まどかとメグは爆笑、さぁちゃんはちょっと不審がっていた。
「山さんもメグ君も笑うなんてひどいです」
「そうだぞ二人とも。直くんだって、教科書がなくなって悲しんで…」
「でもどうせすり替えるならハリーポッター全巻とすり替えてほしかったですね」
「…何、かーちゃん?直江が悲しんで?」
「なかったわ」
どこまでも図太く生きろよ直くん。
「でもさ、実際おかしくない?なんで教科書すり替えられなきゃいけないわけ?」
「まぁ、おかしいことに変わりはないわな」
「誰かのお茶目ないたずらじゃん?きっと明日には戻ってくるでしょ」
「うーん。そうだといいけどねー」