お姉ちゃんの憂鬱
「これも誰かのお茶目ないたずらでしょうか」
「…お茶目とは言えないでしょ」
そんな会話をしていると、次々教室に入ってくるクラスメイトたち。
あたし同様にこの教科書をみて驚いている。
「直江!何だよこれ!」
「さぁ僕にもさっぱり」
「おはよう直江君。…ってなにこれ?!」
「なんなんでしょうね」
一人一人にちゃんと返事をする直くんも律儀だ。
だんだん騒ぎが大きくなる中、あたしはその一人一人の表情を見逃さないように観察していた。
クラスメイトにこんな嫌なことをする奴がいるとは思えないけど、警戒するに越したことはない。
少しでも変な動き変な表情の奴がいたら、問い詰めてやる。
「香奈子、はよ。…これ、やばいな」
「ん。昨日の判断は甘かった」
「…犯人捜し?」
「そんなとこ」
登校してきて、直くんと少し会話した後そっとあたしに近づいてきたメグ。
一応普段通りみんなと会話してたつもりだけど、メグの鋭さはかいくぐれなかったか。
一発であたしが周りを警戒しているのに気付かれた。
あたしと喋ったあと自分の席についたメグも、眠そうに頬杖をつくも、周囲に気を張り詰めている。
まどかとさぁちゃんも登校してきて、ひとしきり騒いだ後同じように警戒している。
…誰がこんなことをしたんだろう?