お姉ちゃんの憂鬱

一時間目のチャイムが鳴ったとき、あたしたちは数学科研究室という部屋にいた。

数学教師である担任がいつもいるのがこの部屋だ。




「授業のクラスにプリント置いてくるからちょっと待ってろ。すぐ戻る」



そう言って担任は部屋を出ていったので、今この部屋にいるのはあたしたち5人だけ。

他の先生も授業で出払っているみたいだ。



「どうしましょう。大ごとになってしまいました」


「いや直くん、十分大ごとだから」


「やっぱり昨日の時点で手を打っておくべきだったね」


「つっても、昨日の段階じゃただのいたずらとしか思えなかったからな」


「お前ら、誰か怪しいの見つけたか?」



そのメグの一言に、空気が少しだけ重くなった。



「あたしは、…見当たらなかった」



直くんと話した後から教室に入ってくるクラスメイトの反応を見てたけど、特に不審な人はいなかった。



「あたしも」

「同じく」

「…だよな。俺も見つけられなかった」



みんなも同じようで、これと言って怪しい人はいなかったようだ。

もちろん、見落としたかもしれないし、相手も演技してることだろうから見えなかったということもあるだろう。


でも、今の時点ではいなかった。




「直くんは、誰か心当たりないの?」





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