お姉ちゃんの憂鬱
持ってきた教科書を眺めながらあたしたちの話を聞く担任。
昨日あったことと、今日のこと、怪しい人はクラスメイトの中には見られなかったこと、心当たりもないことを話した。
「なるほどな…」
それだけ呟いた担任は、一つ一つの教科書を細かく見ていく。
古典、現代文、数学Ⅱ、数学B、世界史、日本史、その他ロッカーに入っていた教科書類すべてがカラフルに染まっている。
「それにしても、なんでこんなカラフルなんでしょうかね。一色でもいいのにわざわざご苦労なことを」
「それはどうでもいいでしょ。というか直江君緊張感なさすぎない?!やられてる張本人なのに!」
「いや、僕も緊張してますよ?」
「というか直江、全部ロッカーに入れっぱなしとか、家で勉強してねぇのかよ」
「え、メグ君いちいち持って帰ってるんですか?真面目くんですか?」
「いや普通だろ。お前が面倒臭がりすぎなんだよ」
「言われてみればそうだね。てかあたしロッカーに鍵かけなよっていつも言ってるじゃん。不用心だよって」
「そうか…これはお姉ちゃんの言葉を蔑ろにした僕への天罰ですね…」
「天罰で教科書カラフルの刑って嫌だな」
「あたしもちゃんとロッカーに鍵かけよっと」
「まどかも開けられ放題だもんね。まどかも直くんも今日購買で買ってきなさい」
「わかりました。山さん一緒に行きましょう」
「おうよ。頑丈に3つくらいつけようよ!」
「まどか、それやるとたぶん開けるとき面倒過ぎてまた鍵つけなくなるから一個で十分だと思う」
「じゃあ一個で!」
「…お前らこんなときくらい静かにしてられないのか」