お姉ちゃんの憂鬱
ずっと教科書を眺めていた担任が顔をあげてため息を一つ。
そんな呆れなくてもいいじゃないの。
「なんとなくわかったぞ」
「えぇ!!」
「なんで?!先生名探偵?!」
「あー、メガネだしな」
「蝶ネクタイ買ってこようか?」
「じっちゃんの名に懸けて!」
「とりあえずお前ら全員黙れ。特に直江は番組間違ってるから黙れ」
あたしたちの反応がお気に召さなかったのか、眉間にぐいーっと皺が寄った担任。
確かに少し騒ぎ過ぎた。
自重しましょう。
「で、何がわかったんですか?」
「あーっとな、こうなった原因?と、なんとなくの犯人像」
教科書を眺めるだけでそんなことが分かるとは、すごいなメガネ。
さすがメガネだ。
「原因はなんなんですか?」
「たぶんお前らだな」
「え、あたしたちが犯人なわけないじゃないですか!馬鹿ですか?!」
「山城、お前今おれのこと馬鹿って言ったよな?言ったよな?」
「すみません先生、まどかはちょっと勢いで本心をしゃべっちゃう子なので、気にしないで続きを話してください」
「本心ってもっとダメじゃねえかよ。……はぁ、気にしてたら話進まねえな。えっと、おれが言ったのは犯人がお前らってことじゃなくて、原因がお前らってことだ。これ見ろ」
そう言って担任が見せてきたのは教科書のあるページ。
そこには大きく黒い絵具で『近づくな』と書いてあった。