お姉ちゃんの憂鬱


「あたしあとで連絡しておくよ。まぁ土日挟むから落ち着くとは思うけど、一応ね…」

「さぁちゃん優しいなあ。よろしく頼むよ。」



きっと今のあたしから連絡が来たところで完全にシカトされるだろう。なんだって沸点の低いお嬢様だな。

熱唱する男子組を眺めつつさぁちゃんとそんな会話をしていると、直くんがいつもの無表情でこちらを見つめてくる。



「どうしたの直くん。」

「いや、お姉ちゃんが誰かとケンカするのを初めて見ましたので。」

「ケンカっつうか、一方的にキレられただけだけどね。」

「でもお姉ちゃんは相手がキレるタイミングを見計らっていつもなら引くじゃないですか。今回は失敗したんですか?」


…あたしはそんな風に思われていたのか。

自分的にはこれ以上ややこしくなると面倒だから仕方ない引いてやるかみたいな感じで今までやってきてたんだけどな。ケンカとかしようとしても怒りが長続きしないんだよな。


「失敗って言うより、むしろ煽っちゃったな。絶対にまどか怒るってわかっててしゃべってたもん。」

「そうですか。山さんはケンカを売られるとすぐに買い取りますからね。煽られて怒って帰っちゃったんですか。」

「そのようだね。まどかってば、ちゃんと話してくれないんだもんよ。」

「お母さんネタだと完全アウトなんだねー。まぁいきなりあんなに若い女の人が来て、今日からお母さんよーなんて言われたら戸惑う気持ちもあるだろうけどさ。」




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